Lesson 13:レースへの調整

速度は保ち距離を減らす 走り込まないことが大切

神戸マラソンのスタートまでついに20日を切りました。
これからは練習量を落として疲労を抜くことで、体調のピークを大会当日にもっていくようにしましょう。
走り込みが多少足りなくても、無理をしないことが大切。
市民ランナーのトレーニング管理に従事しているアシックススポーツ工学研究所(神戸市西区)の田川武弘さん(46)に、レース前の調整方法を聞きました。
(鎌田倫子)

開催日が近づいてくると、誰しも焦って普段よりも練習したいと考えるもの。
本番で好記録を出すためには、はやる気持ちを抑え、あえて練習量を落とすことが大切だ。
「これまでの走り込みで疲労が蓄積しているので、レースまでに回復させる必要がある。
筋肉痛は1週間あれば解消するが、内臓や免疫のような自分では感じにくい疲労は回復に時間がかかる」

大会約1カ月前に開かれたランニング講座で軽く汗を流すランナーら。
レース前は練習量を減らそう=神戸市兵庫区御崎町1、ホームズスタジアム神戸(撮影・辰巳直之)

2週間前から

調整は、エリートランナーなら大会の1カ月前から始め、一般の市民ランナーでも2~3週間前から始める。
神戸マラソンに照準を合わせるなら、長い距離は週明けの6日がリミットだ。
最も走り込んでいた時期の距離を100%とすると、3週間前で75%、2週間前で50%、1週間前は25%にする。
こうした調整方法は、先細りにするという意味の英語「taper」にちなんで、「テーパリング」と呼ばれる。
「呼吸循環器系の能力はキープするため、距離を落としてもスピードは落とさないこと。
また、レースペースも身体で覚えていきましょう」
レースの2日前には、ジョグで身体を温めた後、速めのペースで1キロほどを走る。
故障しないように、少しずつ速度を上げていく。
「速いペースだとストライドが広くなり、より多くの筋肉が動員されるので、脚に刺激が入る。ただ、調子がよくても走りすぎないように」

炭水化物中心

数日前からは食事も重要。
マラソンは、身体の中に蓄えられている糖を主なエネルギー源としている。
脚が棒のようになる“30キロの壁”はこの糖の枯渇が要因だ。
レース前の食事を工夫することで筋肉や肝臓に蓄えられるグリコーゲン(糖)の量を増やすことができる。
レースの2~3日前から、糖質を多く含んだ食事に切り替える。
ご飯が多い丼もの、うどん、パスタなど主食となる炭水化物をメニューの中心にしよう。
「これまでの練習でエネルギーを蓄えられる素地はできている。身体を最大限に利用するために、ガソリンを満タンにして臨んで」

2~3日前からは、パンやごはん、果物など
糖を多く含む食べものを多く取ろう。

〈トレーニングメモ〉
積み上げてきたものを信じて

ずっと左ひざの具合が思わしくない。
少し長く走ると痛みを覚える。
本来なら、ここ1カ月は最も走り込み量が増える時期だが、痛みを考慮し、週末の練習は15キロ程度にとどめてきた。
このまま大会当日を迎えてしまうのは正直不安だ。
35キロまで距離を延ばしておきたい。
しかし、記者のようにけがや故障で思うように練習をこなせなかったランナーも、レース2週間前を過ぎたら30キロ以上は走る必要はないという。
「練習は本番で力を出し切るためのもの。不安解消のために無理をした揚げ句、危険な状態で臨むのは大間違い」と田川さん。
筋トレやストレッチで脚の状態を改善するよう指導された。
最終ロングのリミットは6日。
それ以降は走れていても走れていなくとも悪あがきするだけマイナス。
積み上げてきたものを信じて、スタートラインに立つしかない。

(神戸新聞2011年11月02日掲載)


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