Lesson 1:シューズ選び

軽さより安定性重視して 両足で試してベストな一足を

休日ともなれば、街のあちこちでランナーたちを見掛けます。
健康維持、ストレス解消、ダイエット…。
理由はどうあれ、走り始めた人の中には「もっと速く走りたい」
「フルマラソンに挑戦したい」と新たなステージを目指す人も。
かく言う記者もその一人。
秋の神戸マラソン完走を見すえ、トレーニングにまつわる話題をお届けします。
初回はランナーのパートナーであるシューズの選び方。
(鎌田倫子)

ヒトにとって「歩く」と「走る」の違いとは。どちらかの足が接地しているのが前者。
後者は体が宙に浮く瞬間がある。
地面を蹴って着地し、再び踏み出すまでに片脚に体重の2~3倍の負荷がかかるという。
この動作の繰り返しがランニングだ。
シューズの役割は衝撃の緩和と足の保護にあるが、わずかのズレが反復によって摩擦や痛みを生み出すこともある。
ベストな一足を探して、大阪・梅田の阪急百貨店イングス館を訪ねた。

目移りしそうなほどの種類のランニングシューズ。
時間をかけてベストパートナーを探そう。
=大阪市北区茶屋町、阪急百貨店イングス館アシックスショップ

一体感で選ぶ

試し履きは必須。
かかとをくっつけ、ひももしっかり締めて必ず両足をはく。
大事なのはシューズと足の一体感だ。
つま先には指1本分くらいのゆとりがあるか、逆にゆるすぎて足が靴の中を滑らないか。
この時点で違和感があれば相性はいまひとつといえる。
アシックスで商品の企画・開発を担当する大野宏之さん(47)は「接客を惜しまない店で時間をかけて。閉店30分前に駆け込むのは選択ミスのもと」と話す。
男女では足の骨格や筋肉の付き方が異なるため、シューズの設計も当然違う。
骨盤の形の違いから、脚の運び方も異なるため、靴底のソールの素材や幅、傾きなど違いは細部にわたる。
「女性が男性用の小さめのサイズを履くのはお薦めしません」

ラン歴正直に

店員に相談する時、ランニング歴は正直に告げよう。
シューズはレベルや目標に応じた設計になっているからだ。
見た目がわかりやすいのはソール。
初心者は厚く、上級者ほど薄くなる。
「上級者は受け身の達人と考えて。膝や足首のひねりなどで地面から受ける力を
逃がしている」。
走り始めたばかりのランナーは、クッション性重視のシューズを選ぼう。
シューズの重量が気になるが、市民ランナーが重視すべきは安定性だ。
フォームが悪いと体が左右にふらつき、軸を戻すために余計なエネルギーを使うからだ。
故障にもつながる。
「手に持った感覚で選ぶのは危険。足にフィット感があれば軽く感じるはず」

〈トレーニングメモ〉
かかとの収まりが決め手

記者が普段購入するパンプスのサイズは22・5か23センチだが、
実際に測定すると、24センチが最適で右が左よりも若干大きかった。
シューズは大きな方に合わせるのが原則で、あまりに左右差がある際は中敷きで
調節するという。
試し履きではデザイン面で海外ブランドのシューズに目を奪われたが、
かかとの収まりがいまひとつ。
欧米ではかかとの細い人が多いが、一般に日本人は広めだ。記者は向いてないようだ。
1時間ほどかけて4足を履き比べた。
できるだけ歩いてフィット感を確認。
安定感を重視したシューズはやはり快適。
もうデザインなど気にならなくなった。
国内ブランドの初心者向けのシューズを選んだ。
頼れるパートナーは決まった。
出勤前や休日の3~5キロ走から、フルマラソンに向けたトレーニングが始まった。

(神戸新聞2011年5月18日掲載)


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