「さあ、走ろう!」。
意気込んで外に出ると、予想外の雨。
この時期、計画通りに走れず、もやもやしている人にお勧めなのが
筋力トレーニングです。
脚力の強化だけでなく、フォームの改善にも役立ちます。
ランナーのトレーニングに詳しいアシックススポーツ工学研究所(神戸市西区)運動能力開発チームマネジャーの田川武弘さん(46)から、自宅でできる筋トレのポイントを教わりました。
(鎌田倫子)
「ランニング量に見合った筋肉が脚についてないと故障やけがのもとになります」
短い距離を速めのペースで走る時でも、片脚に体重の2~3倍の荷重がかかる。
それを支えるのが、下半身の筋力だ。
といっても、ランナーが目指すのは、ボディービルダーのような「マッチョ」な体ではない。
マシンは使わず、自分の体重を利用する。
持続して力を出せるような筋肉を増やすのが理想だ。
基本は、脚全体を使う「スクワット」とふくらはぎを使う「カーフレイズ」、太ももの付け根を鍛える「サイレイズ」。
どの部分を鍛えているか意識しながら、正しい姿勢で続けよう=図参照。
反動はつけず、呼吸は止めずに力を入れる時に息を吐き出す。
回数は15回程度から始め、徐々に増やす。
「きついな」と感じた後も続けること。
「焼けるような感覚が出てきてから辛抱して回数を重ねる。
『もう少し頑張れる』と自分を奮い立たせて」脚の筋力は左右で異なることも少なくないが、トレーニングの回数は同じで構わない。
「弱い脚でのトレーニングの方がきつく感じるはず。
その分、鍛えているということ。
続けていくことで左右の筋力差が解消されます」
筋トレは、正しいフォームを身につけるのにも役立つ。
片脚でするスクワットは、骨盤の安定感に効果的だ。
着地後に太ももがねじれるようにひざが内(外)側に向いてしまう癖の矯正に最適だ。
「ひざの向きは股関節が影響しています。
そこが安定すればひざは正面を向き、フォームの左右のブレも小さくなります」
ランと筋トレをどう組み合わせるか。
走る前に筋トレをした方が脂肪を燃焼しやすいという研究もあるが、田川さんは走った直後を勧める。
「ランニングを先にした方が良いペースで走れ、心肺や脚への負荷を高めることができます。結果的に脚への刺激を大きくできるので、筋トレは練習の仕上げとして取り組んで」
頻度は週2~3回。
負荷が軽ければ毎日続けてもランニングに影響は出ないが、やり過ぎないことも必要だ。
「週3回のランニングと一緒にして、ほかの日はしっかり休養して。その方が回復の波に乗れます」
人は弱く、やすきに流れるもの。
初心を貫くためにも、トレーニング日誌をつけることをお勧めします。
記者の場合、カーフレイズと片脚スクワットを各20回、太ももと臀部(でんぶ)を鍛えるヒップリフトを15回から始めた。
2カ月半の間に、片脚スクワットとカーフレイズは30~40回に増えたが、ヒップリフトは20回。
数日後、記者を指導してくれている田川さんから厳しいメールが届いた。
「ヒップリフトだけ最近、回数が同じですね」。
この運動は負荷が大きく、筋力の弱い人は特に苦しい。
知らず知らずのうちに上限を設けていたのを見事に見抜かれた。
鬼コーチからの〝金言〟をランナーの皆さんに贈ります。
「体は急には変わらないが、人の気持ちはすぐ上下してしまう」
(神戸新聞2011年6月29日掲載)
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