各地で記録的な暑さが続きます。
強い日差しを避けるため、早朝や夕方以降に走るのが基本ですが、
大切なのがトレーニング中の水分補給。
怠ると、熱中症の危険も高まります。
(鎌田倫子)
人間は環境に応じて、発汗や血管の収縮・拡大などで、体温が37度程度に維持されるような調整機能が備わっている。
暑くなると汗の蒸発に伴う気化熱で、体温の上昇を抑える。
発汗があまりに多く、水分の補給が十分でないと、この機能が働かなくなる。
体重の2%を超える水分が失われると、動作が緩慢になるといい、6~10%で重度の熱中症である熱射病になるとされる。
週末などに1時間以上走り続けるような長距離のトレーニングには、水分の摂取は必須。
ウエストポーチにドリンクを入れるか、コース中に自動販売機で買うなどして、30~40分ごとに発汗で失った水分を補おう。
夏のトレーニングでは水分補給は必須。
給水休憩を取るか、
ウエストポーチにドリンクを携帯しよう。
「汗にはナトリウムや塩分などが含まれているので、水分補給には水よりもスポーツドリンクが適しています」
ランナーのトレーニング管理に詳しいアシックススポーツ工学研究所の田川武弘さん(46)はアドバイスする。
水分だけを補うと、体内のナトリウム濃度が低下し、水中毒(低ナトリウム血症)と呼ばれる状態に陥ってしまう可能性もあるという。
めまいや頭痛、けいれん、重篤な場合は脳浮腫や死に至ることもある。
ドリンクは冷たい方がおすすめ。
胃の通りがよく、身体を冷やすこともできるからだ。
どれくらいが適量なのか。
「のどの渇きに応じて飲むのが一番いい」。
発汗量はレベルや体格などの個人差が大きく、コンディションや天候によっても異なり、一概に言い切れない。
ランニング学会も同様の見解だ。
レース中のアクシデントの原因は、脱水だけでなく、水中毒など水の過剰摂取であることも少なくない。
各自の自覚に頼る方が脱水に陥ることもなく、飲み過ぎにもならないという。
どうしても目安となる数値を知りたいという人は、普段の練習から発汗量を調べよう。
レースと同じペースで1時間走り、前後で体重を測る。
1グラムを1ミリリットルとして、体重の減少分を発汗量と推測する。
途中で水分を補給した場合はその分を加える。
必ずしも発汗と同じ量の水分を補給する必要はなく、多少不足しても構わない。
「体重の2%以内の脱水率であれば基本的に心配ありません」
脱水率は前後の体重から算出。
体重の減少量を練習前体重で割った値に100をかける。
その値が3%を超えていたら補給が足りず、前後で体重が増えてマイナスになった場合は飲み過ぎなので注意しよう。
自宅の冷蔵庫にレモンの砂糖漬けを常備している。
朝のトレーニング前、一切れをコップ1杯の水で流し込む。
朝の運動前に水分補給が欠かせないのは、夏だけに限らない。
運動生理学の専門家によると、生体リズムから朝は血液が固まりやすいという。
血液の凝固を防ぐ働きをする「tPA」という物質が、明け方は低いからだ。
加えて就寝中の発汗で、体は水分が足りない状態。
ドロドロの血液は心臓に負担を掛ける。
朝は糖分補給も必須。
空腹状態で運動すると、体は脂肪を分解してエネルギーをつくり出すが、それに伴い、遊離脂肪酸が血液中に生じる。
これが大量に出ると不整脈の原因となるという。
レモンは日焼けから肌を守るビタミンCが豊富。
この時期、ランナーの敵は暑さだけでない。紫外線対策もお忘れなく。
(神戸新聞2011年7月20日掲載)
特別協賛社
協賛社
共催社