さあ9月。
レースシーズンの開幕です。
これからはフルマラソンを走りきるための体力養成がカギ。
平日、短めの距離を速いペースで走る練習から、週末に長い距離を走り抜く練習に力点を移していきましょう。
トレーニング管理に詳しいアシックススポーツ工学研究所(神戸市西区)の田川武弘さん(46)に、練習のポイントをうかがいました。
(鎌田倫子)
走り込みの時期は、レースの3カ月ほど前から。
直前(2~3週間前)の調整期まで週末の練習で走る距離を徐々に延ばしていく。
これまで続けてきた速めのペースで8キロ程度を走る練習は平日1回にとどめ、週末に20キロ以上の長い距離をこなす。
ペースはゆっくり。
この時期は距離延長が目的で、スピードではないからだ。
「大切なのはペースを一定に保って走ること。初回は本番を想定したペース(ATペース)より30秒から1分遅いペースで走り、翌週はそれより速く走ってみよう」
順調に距離を延ばしていけたら、本番を想定した練習もレース前に2回ほど。
普段は8~9割の力で走っているのに対して、この練習では本番のように力を出し切るつもりで走ろう。
「ただ、走り込み時期は疲労がたまりがちなので最初からレースペースまで速度を上げると、後半失速してしまう。実際の速度よりも、“がんばり度”を重視して」
これからの時期で気を付けたいのがけが。
長い距離の練習は、身体への負担が大きく、疲れたままの脚で無理に走ると故障のリスクが高まるからだ。
最終的に練習で走る距離は35~37キロで十分。
フルマラソンの距離(42・195キロ)まで延ばす必要はないという。
「フルマラソンの距離を走ると、回復に時間がかかりすぎて練習のリズムも狂いがちになる。不安解消のためにチャレンジすることはマイナス面が多い」
疲労の蓄積を避けるために、3週間おきに軽めに済ませるのもポイント。
15キロ程度を快適なペースで走る週を必ず設けよう。
平日の練習には、疲労の確認と脚への刺激として5キロの「調整ジョグ」を1~2回交ぜてもいい。
最初の4キロはペースを気にせず脚の状態を確認しながら走り、最後の1キロで9割程度の力を出す。
疲労がなければ自然にペースアップできるはずだ。
「しっかり走り込んだ後に、疲れを取ってレースに臨んで。
本番の高揚感を借りればフルマラソンは走りきれるはず」
日曜早朝、閑散とした東京・霞が関の官庁街を抜けると、Tシャツに短パンの人たちが現れる。
先日、話題の“皇居ラン〟を体験した。
午前6時にもかかわらず、少なくない数のランナーが走っていた。
皇居の周囲は1周約5キロ。
信号が一つもなく、歩道が確保され、評判通り走りやすい。
3分の1が平たん、3分の1が上り坂、残りが下り坂。
適度な緩急があるコースがランナーを飽きさせない。
ランニング姿の初老の男性に「がんばって」と声をかけられ、軽快な足取りの白髪交じりの女性に追い抜かれた。
触発され、予定より1キロあたり30秒も速いペースで走ってしまった。
当然翌日は筋肉痛に悩まされる羽目に。
レースの失敗原因の一つはペース配分。
本番は皇居ランナーの背中を思い出し、冷静に走りたい。
(神戸新聞2011年9月07日掲載)
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