シューズやウエアをそろえ、トレーニングに励むあなた、
ところでそのフォームは大丈夫ですか。
体格や骨格、筋力が異なるため、走り方は人によって違いますが、
正しいフォームは、体力のロスや疲労を抑え、けがの予防にもなります。
運動時の身体のデータ測定や動作分析をしているアシックススポーツ工学研究所(神戸市西区)で走り方を伝授してもらいました。
(鎌田倫子)
いいフォームとは?
「身体の軸が安定し、重心がぶれずに前進する。水平に滑るような走りです」
と同研究所運動能力開発チームマネジャーの田川武弘さん(46)。
運動生理学が専門でランナーの体力測定やトレーニング管理をしている。
例えば五輪クラスのアスリートは上下動が少なく、肩の位置がほとんど変わらないという。
ただ一般ランナーにこのレベルを求めるのは至難の業。
むしろ悪癖が付かないようにするのが近道だ。
体格はランナー一人一人違う。
ピッチやストライドは人それぞれだが、軸が安定しているのがいいフォーム=加古川市内(撮影・辰巳直之)
「初心者が目指すのは『トコトコ走り』です」
ウオーキングを少し速くしたイメージ。
地面を強く蹴らず、膝や太ももはあまり上げない。
腰の位置は高く保つ。
以下の手順で体重移動のこつをつかもう=図参照。
体の軸も意識。
左右のふらつきは、足首や膝などの関節に余分な負担がかかりやすい。
上半身も片方の肩が下がっていないか、腕振りに伴い体がねじれていないか、
チェックしよう。
スピードを上げようとすると肩に力が入って上体が硬くなりがちだ。
「肩甲骨を使って、リラックスして肘から振るような気持ちで」
「NGフォーム」を紹介する。
初心者が陥りやすいが、自分でチェックできるので、
身に覚えがあるランナーの方はご注意を。
<弾むような走り>
強く地面を蹴る走りは×。
キックした分、脚が地面から受ける力も大きい。
距離が伸びると体への負担も増す。
リズミカルに走ろうとして記者もこんな走りをしていた。
<腰が沈んでいる>
脚を踏み出した際、膝が曲がりすぎると、腰の位置が低くなってしまう。
再び正常な位置に戻すのに余分な力がいる。
<身体から遠いところで着地>
ストライドを伸ばそうとすると陥りがち。
着地点が重心からあまり遠いと、ブレーキがかかり、推進力が落ちる。
1月から平日5キロ、週末13キロを走り始めた。
腰から右太もも裏にかけ、しびれるような感覚が出たのは2月。
だましだまし走っても違和感は消えず、整形外科を受診した。
原因は「梨状筋(りじょうきん)の緊張」。
臀部(でんぶ)奥深くにあるこの筋肉の近くを座骨神経が走っており、
過度に緊張した梨状筋が神経を刺激し違和感が生じているとのこと。
梨状筋は股関節の動きにも関わる。
「右の股関節が硬いですね」と医師。
走行時、片脚には体重の2~3倍の負荷がかかる。
緩衝器の役目を果たす股関節が硬いと、疲労がたまり筋肉に張りが出る。
記者は負荷をさらに増やす、弾むような走り方をしていた。
体の構造と走り方、生じた痛み。
複雑な方程式が解けた気がした。
以来、地面を蹴らないよう意識して走り、柔軟体操を日課にしている。
そしてひとつを学んだ。
ランニングは科学である。
(神戸新聞2011年6月1日掲載)
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