練習しているのに記録が伸びない―。
そんな悩みを抱えるランナーの皆さん、きちんと体を休ませていますか。
練習をしすぎると、タイムの向上を望めないばかりか、逆に体力低下を招きかねません。
成果を得るには適切な休養が大切です。
(鎌田倫子)
走り始めたばかりの人は練習量が増えるほど効果が出ると誤解しがちだ。
まじめな人ほど「毎日走らねば」と自分を追い込んでしまう。
トレーニングで身体に負荷をかけても、時間がたてば回復する。
しかし無理を重ねると、回復する前にさらに負荷を重ねることになり、疲労が蓄積して思わぬ故障につながることも。
俗にいう「休みも練習のうち」は科学的に裏付けられたアドバイスなのだ。
「筋力を高めるには一定の休みが欠かせません」と神戸常盤大学保健科学部看護学科の柳本有二教授(運動生理学)は強調する。
筋力を鍛えると筋繊維が少しだけ傷つく。
修復されるのに伴い、トレーニング前よりも少し多くのタンパク質が作られ、筋肉が太く、強くなる。
「超回復」と呼ばれる現象で、これが筋力アップにつながる。
超回復を利用し、トレーニングの間に休養をうまく取り入れると運動の成果が次第に向上していく=図参照。
ところが休まず負荷をかけ続けると、効果がないばかりか、当初よりも低い水準になってしまう。
これがオーバートレーニングの状態だ。
オーバートレーニングを避けるにはどうすれば。
ランナーのトレーニング管理をしているアシックススポーツ工学研究所(神戸市西区)運動能力開発チームマネジャーの田川武弘さん(46)によると、緩急のある練習が鍵という。
基本は2日連続で練習しない。
週のどこかに完全休養日を設ける。
「ハードに走った翌日は筋肉トレーニングもしなくて構いません」
激し過ぎる筋トレは、脚力を鍛えるどころか、筋肉を傷めてしまうことになる。
天候不順で走れない日が続くと、脚が元気になった気がして、筋トレをやり過ぎていることもあるので注意を。
「毎日する場合は必ず鍛える部位を変えて」
筋肉の回復にはタンパク質の摂取も大事。
肉や魚、大豆などをメニューに取り入れて。
「吸収が早いので市販のプロテインを利用してもいい。
練習後に回数を分けて補給するのがポイント」
睡眠も欠かせない。
寝ている間に成長ホルモンが分泌されて筋肉が修復されるので、夜更かしはランナーの敵だ。
「規則正しい生活で体のリズムを守り、身体をしっかり休めてほしい」
完全休養日は、
ランニングシューズを陰干しするなどの
お手入れを。
順調な時ほど、休養日を設けるのは勇気が要る。体力が落ちてしまうかも。
リズムが崩れるのでは。
これが挫折への第一歩になったら…。
運動生理学的には、2週間以上休むと体力は落ちるが、1週間ほどではさほど変わらないという。
実際、風邪で10日間ほど走れなかったとき、記者のタイムは前後であまり変わらなかった。
疲労の程度を確かめるには5キロの調整ジョグがお勧め。
5キロのうち4キロはペースを気にせず脚の状態を確認しながらゆっくり走り、最後の1キロでペースを上げて8~9割の力を出す。
前回までの疲れがなければスピードに乗って流すように走れるが、疲れているとうまく脚を運べない。
ランニングの識者いわく「自分の体を自分でチェックすることが大切」(大阪体育大学の豊岡示朗教授)。
自己管理が、完走に一歩近づくのだろう。
(神戸新聞2011年7月06日掲載)
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