蒸し暑い毎日、普段のトレーニングも苦しく感じます。
練習をこなすのに精いっぱいで、目的や効果を忘れかけていませんか。
来たるべくマラソンシーズンに向け、あらためて日々の練習内容を
おさらいしてみましょう。
トレーニング管理に詳しいアシックススポーツ工学研究所の田川武弘さん(46)に
アドバイスしてもらいました。
(鎌田倫子)
8月末くらいまでは、練習の第一の目的は走力アップ。
平日は週2回、速めのペースでやや短い距離を走ることで心肺を鍛え、脚力を養う。
週末には長い距離をゆっくり走る。
これが基本だ。
気温が高い中でスピードを上げようとすると、逆にペースが落ちることがある。
体内の熱がうまく発散されなくなるためだ。
そうした環境でもトレーニング効果を得るためには、心拍数が落ちないように走ることが重要だ。
「スピードを維持しようと、タイムを気にしすぎるよりも、自分自身の主観的な目安である『がんばり度』を一定に保つこと。
レースで100%出し切るとすれば、その8~9割で走っている感覚を大切にして」
苦しくなると、身体が楽をしようとして、無意識のうちに筋肉の活動を少しでも減らそうとする。
その結果、正しいフォームが崩れ、関節に負荷が掛かるような走りになってしまう。
「そういった状態では、酸素摂取も落ちるのでトレーニングとして好ましくない。
最後までしっかり脚に力の入った走りを意識しよう」
週末に10~20キロ程度を走る時は、無理せず快適なペースで。
そうすることで運動量を増やし、徐々に走れる距離を伸ばしていこう。
夏場は給水が大事。
再度、タイミングや量をチェックしてみよう。
この時期は休憩を取りたくなくても30~40分ごとに2~5分は立ち止まってしっかり水分を補給する。
「この時期は途中で止まることを気にする必要はない。休憩を取りながら快適に走ろう」
夏場のトレーニングはマンネリになりがち。
もう一度この時期の内容と目的を振り返ってみよう。
トレーニング後には、十分な休養とタンパク質の摂取が重要。
傷ついた筋肉を速やかに修復させるためだ。
糖やタンパク質の代謝を促すため、ビタミンB群も積極的に摂取する。
普段から意識して取り入れたいのがビタミンC。
「コラーゲンの生成に役立つので、筋肉が着いている腱(けん)組織を強固にする。
全身に酸素を運ぶ働きをする鉄の吸収も促すのでランナーにはうってつけ」
食材ならレモンやキウイ、赤ピーマンなどに豊富に含まれている。
水溶性であるため、取り過ぎた分は体から排出される。
サプリメントを利用してもいい。
8月も今日でおしまい。
来月からはいよいよ走り込みの時期だ。
ビタミンCはランナーが意識して取りたい栄養素だ。
夏場のトレーニングはマンネリになりがち。
もう一度この時期の内容と目的を振り返ってみよう。
疲労のあまり体が食べ物を受け付けない。
先日、初めてそんな経験をした。
暑さ対策として、長い距離を走る週末は練習は日没後。
とはいえ、夜間も気温は30度近い。
汗が止まらず10キロを過ぎると脚もつらくなる。
止まると倒れるような感覚に襲われ、必死で脚を動かし続ける。
20キロを走り切った後、水かゼリーしか口にできない。
空腹のはずが全く食欲がなく、夕食を食べずに寝てしまう日が何度かあった。
「立ち止まって給水を」と田川さんから指摘された。
「楽をしてはいけない」と思うあまり、途中で脚を止めなかったのだ。
翌週は8キロと12キロ地点で2~3分の給水休憩をとった。
すると、残り3キロでペースアップでき、休憩を含めても結局タイムが上回った。
練習は本番で成果を得るため。
根性論のような頑張り過ぎは避け、効果的に鍛えたい。
(神戸新聞2011年8月31日掲載)
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