Lesson 12:エネルギー補給

消化の早い流動食が有効 レース前半から摂取を

フルマラソンは長丁場。
市民ランナーの場合、完走するには途中でエネルギー補給が欠かせません。
主催側も沿道で水やスポーツドリンクのほかバナナやあめなどを配りますが、消化が早い市販のゼリー状飲料を携帯するのがお勧めです。
自分に合ったものを見つけ、本番までの練習で試してみることが大切。
アシックススポーツ工学研究所(神戸市西区)の田川武弘さん(46)にレース中の補給食について聞きました。
(鎌田倫子)

長時間の運動を継続する場合、筋肉や肝臓に蓄えられたグリコーゲン(糖)が燃焼されエネルギーになっている。
フルマラソンを走り抜くには、身体に蓄えられた量では足りないため、ガス欠で脚が止まってしまう。
これがいわゆる“30キロの壁”。レース中の食べ物摂取はこれを回避するためだ。
またエネルギーを補給することで、めまいや顔面蒼白(そうはく)、頭がぼーっとするといった低血糖による症状を防ぐことができる。
「血糖のコントロールには、肝臓のグリコーゲンが利用される。走るためのエネルギーに使われて減少すると、血液中の糖濃度が低下し、脳の活動が鈍る恐れがある」

市販のゼリーやアミノ酸は、味や形態、量はさまざま。
練習で試して自分に合うものを見つけよう。

10~15キロおき

固形食よりも消化のよい流動食が適しているという。
マラソンや自転車などの運動中に摂取するためにゼリー状の清涼飲料水が市販されている。
少量でもカロリーが高く、味や形態も豊富だ。
「消化がよくても、急激に血糖値が上がらないように調整されている。
3個程度をウエストポーチに入れて、上手な利用を」
摂取のタイミングは10~15キロおきに小刻みに。前半から使っていくのがポイントだ。
「バテてからでは内臓が弱っていて十分に吸収できないこともある」

練習で確認を

アミノ酸系のサプリメントも取り入れたい。
分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼ばれる体内で合成できないアミノ酸は、筋肉でエネルギーとして利用されるとともに、エネルギー不足から筋肉のタンパク質が分解されてしまうことを防ぐ働きがある。
水なしで、そのまま飲める顆粒(かりゅう)スティックもある。
「10~15キロ地点で飲むのがお勧め。後半に脚がガタガタになるのを少しでも防いでくれる」
本番でリズムを崩さないよう、こうした補給食は、週末のロング走で一度試してみること。
「ポーチからうまく取り出せるか、自分の口やおなかに合うか、練習で確認を忘れずに」

〈トレーニングメモ〉
膝関節の裏に違和感

11月20日の神戸マラソンまであと1カ月。30キロ近くまで走行距離を延ばしてきたが、ここに来て思わぬ壁が立ちはだかった。
週末のロング走の途中で、左の膝関節の裏のあたりに違和感を覚えた。
痛いような、筋を違えたような、これまでなかった類いのつらさだった。
念のため、予定していた距離をこなさずに歩いて帰宅。別の日のロング走でも、14~15キロ付近になると違和感が出てくる。
速いペースで8キロほどを走るときは何でもないのに。
整形外科を受診すると、膝関節の裏に付着する筋肉の炎症「膝窩筋腱炎(しつかきんけんえん)」と診断された。
下り坂のランニングで発生しやすいという。
先日のハーフマラソンで、アップダウンのきついコースを走ったことが影響しているようだ。
「15キロくらいで筋肉が悲鳴を上げています。トレーニングで鍛えるしかありませんね」と担当医。
練習メニューを変更しなければならないが、焦って無理をしても仕方がない。
リハビリに通い、筋トレを覚えることにした。

(神戸新聞2011年10月19日掲載)


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